政府はもう嘘をつけない (角川新書)[本/雑誌] / 堤未果/〔著〕
政府はもう嘘をつけない (角川新書)[本/雑誌] / 堤未果/〔著〕



 へっぶしんです。

 堤未果氏の著書は結構読んでいるので、サクッと読めました。それにしても、新自由主義の社会に生きていて、企業は命よりもカネを優先しているのだなと切に感じました。堤氏の新作は常にチェックをしていかなければならないですね^^;




 著者は、堤未果氏です。

 国際ジャーナリスト。東京都生まれ。ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士号取得。国連、アムネスティ・インターナショナルNY支局員、米国野村證券を経て現職。日米を行き来し、各種メディアで発言、執筆・講演活動を続けている。多数の著書は海外で翻訳されている。

 『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 なぜあの国にまだ希望があるのか [ 堤未果 ]』で日本ジャーナリスト会議黒田清新人賞、『ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書) [ 堤未果 ]』(3部作)で日本エッセイストクラブ賞、新書大賞受賞。近著に『沈みゆく大国アメリカ(逃げ切れ!日本の医療) (集英社新書) [ 堤未果 ]』(2部作)『政府は必ず嘘をつく (角川新書)[本/雑誌] / 堤未果/〔著〕』など。

 さらに、『日本が売られる (幻冬舎新書) [ 堤未果 ]』でも、記事を1本書いています^^




  新自由主義の脅威が世界を覆っていますね。1%の富裕層が社会の富の99%を所有する世の中になっているアメリカを、必死の形相でマネをする日本はどこに向かおうとしているのでしょうか。アメリカでは、すでに5割の人がフルタイムでの労働ができずに、低賃金で働かされています。大学を出るために、地獄の学生ローンを組んでいる学生が7割にも達し、奨学金を返済できずに破産する若者が増えています。給付型の奨学金がほとんどない日本でも、同じ流れになっていくでしょう。


 第2章では、「日本に忍びよる「ファシズムの甘い香り」」と題して、緊急事態条項について書かれています。この辺の情報は、普通にフォローしているので目新しいことはあまりなかったのですが、現政権の改憲案に滑り込んでいる内容は、先進諸国の中でも突出して酷い内容のようです。自然災害が起こった時に、内閣の出す政令が法律と同等の権限を持つようになるようです。自然災害で、緊急事態条項が発せられれば、内閣が立法権をも掌握し、衆議院の解散が停止するようになるとのことです。この一旦出された緊急事態宣言は、最低でも100日続くということで、他の先進国は最長でも30日のような決め方になっているようです。

 どこまで、内閣に国家権力を掌握させれば気が済むのでしょうか。自民党の改憲案が通ってしまったら、独裁国家日本が誕生してしまいます。この強力な国家権力の掌握度は、北朝鮮と同等だということです。それでも現自民党政権を支持し続ける奴隷根性の染みついた日本の有権者のメンタリティを、これから変えていくことはできるのでしょうか。


 第3章では、海外のニュースも実は、必要な情報を正しく流そうとはしていないということが書かれています。新自由主義によって、多国籍化した企業は、現在は国よりも国際社会に対して発言力を持ちつつあります。第1章では、多国籍企業のロビイストによるアメリカ政権の掌握の仕方が解説されていました。巨大資本により牛耳られているマスメディアは、自らに不利なニュースは出さずに、真実の側面にあることばかりを報道して、民衆を操作しているとのことです。


 このことは、共謀罪の成立過程や水道事業民営化法案の成立過程でもまざまざと見せつけられていました。個人的には、報道の自由度ランキングがウナギ下がりの日本だけの現象かと思っていましたが、欧米でも似たようなことが起こっているようです。


 信じたくない状況が、先進国でも起こり続けているようです。


 このマスメディアの報道の仕方で気になったのが、アイスランドで起きた「鍋とフライパン革命」です。個人的にアイスランドという国名を聞いたのが、パナマ文書の流出で首相が辞任したというニュースでした。それ以前のリーマンショックでの国家破産については、あまり知りませんでした。リーマンショックでの国家破産で、IMFが医療の切り下げを要求したことをきっかけにして、アイスランドで政府反対運動が盛り上がり、政権が辞任。そこから新憲法を成立させて、「カネより命」の国に生まれ変わったとのことです。


 「カネより命」の国とは、国民の税金を高負担にして、医療・教育を充実させる政策をするということです。日本では残念ながら、公教育のレベルが低く、大学受験に関しても、けっして今日の高い人間が通りやすい制度にはなっていません。さらに、何度か記事で書いたように思うのですが、国内で一番良いと位置づけられている東京大学の入学者の内訳は、公立も含む中高一貫校出身者が7割にもなります。教育は、ほとんど自己負担の国なのです。


 私の理想的な国家像は、分厚い中間層に支えられた福祉国家です。つまり、戦後の復興を遂げる中で成し遂げられたバブル前の日本が理想的だと思っています。しかし今の日本は、中曽根内閣以降に、次々と新自由主義政策が取り入れられ、戦後の復興の中で縮小した格差を拡大させ続けています。私は、一握りのエリートではありませんので、今のような世の中にはNoと言いたいです。健全にひとりの市民として生活しようとすることができなくなり、ほとんどの市民が(すでにアメリカでは半数)貧困にあえぐような社会は、健全ではないはずです。


 今、安倍政権によって壊されようとしているのは、世界に誇る共助の制度である国民皆保険制度です。だれもが安心して医療を受けられる制度が壊され、ひとにぎりの富裕層だけが分厚い医療を受けらるような民間企業の医療保険だけになってしまったらどうなるのかを、政治に疎い日本の有権者に、少しでもいいから想像してほしいです。


 このような多国籍企業による「命よりカネ」が大事な世の中への変化を少しでも止めていきたいです。


 久しぶりに格差社会についての記事になりましたが、カネにより良識・倫理観が破壊されている世の中にシフトチェンジしている日本に住んでいて、恐ろしく思っているのは、私には貧困層が見えないことです。周りを見渡すと、世帯年収の上位2割以上の人しか見えません。平均世帯年収である460万円程度の収入で暮らしている人すら、近くにいないのです。


 分断化された社会はとても不健全です。道徳心の強い日本人の国民性のおかげで、犯罪率は高くなっていないようですが(感覚なのでソースはありません)、外国人技能実習生の制度などで、日本の常識を持ち合わせない外国人を大量に受け入れれば、犯罪率も上がり、凶悪犯罪が増えることが予想されます。


 今の自民党政権がすごい勢いで推進している新自由主義政策を受け入れるということは、自分の生活を破壊し、自ら貧困層へダイブする自殺行為です。普通の生活を普通に営んでいきたければ、政治に目を向けて、現在の世界情勢を考え、アイスランドの「鍋とフライパン革命」を見習うべきではないでしょうか。

 よろしければ、こちらのくりっくをよろしくお願いします。



政府はもう嘘をつけない (角川新書)[本/雑誌] / 堤未果/〔著〕
政府はもう嘘をつけない (角川新書)[本/雑誌] / 堤未果/〔著〕