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【中古】 しのびよるネオ階級社会 “イギリス化”する日本の格差 平凡社新書/林信吾(著者) 【中古】afb

価格:108円
(2018/9/23 16:49時点)
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 最近は、格差社会という言葉に異様に執着しています。

 最近まで自分のキャリアパスが報われていないと、社会を恨んでいました。大学卒業時に就職活動せずに、卒業して人生初の「浪人」(無職)という立場になった瞬間に、自分の社会的な存在意義に危機感を覚えて、就職活動を開始しました。しかし、ロスジェネ世代の私は、企業から相手にされませんでした。

 たぶん100社くらいエントリーしたのではないでしょうか。そして、30・40社をうけるという、当時としては極めて普通の状況だったのですが、会社の規模をどんどん落としていき、ようやく内定をもらったのは社員20名くらいの零細企業でした。

 零細企業を否定する気は全くありませんが、やはり待遇ということを考えると、まじめに就職活動をして大手に就職していった友人と比べると、あまりにも見劣りをするものでした。それでも、必死に働きました。多くの会社が間に入る偽装請負の状態で、大手電機メーカーのエンジニアたちと仕事をしました。

 そこでも、同じ仕事をしている現場のプロパーの社員の将来の展望と、自分の展望には大きな差が存在しました。さらには、同じ仕事をしているにもかかわらず、年収の差に悔しい思いをしながら仕事をしていました。

 ただ、昔の記事をあさっていただければどこかにあると思うのですが、大手メーカーが海外製品のプロジェクトに入ることになり、香港に180日・ロンドンに30日の海外出張に行くことができました。会社の金で海外に行けていた当時は、海外旅行をするのをばかばかしく思っていました。

 そのころのプロジェクトは激務でした。周りとの待遇などは、海外に行けて、海外で働けているという状況であまり考えなくなっていました。しかし、その大手メーカーの部長の勤務状況を見ていて、自分が目指している姿とは違うのではないかと思うようになました。結局、会社を3年で辞める若者になりました。

 それはさておき、何度もアップしていますが、最近見つけた厚生労働省の「国民生活基礎調査」での世帯年収の棒グラフを見て、それでも自分は恵まれており、それなりの収入を得てきたという事実を知るに至り愕然としました。

 自分が新卒時に就職活動をしなかったつけを10年以上も払い続けて、そのまま一生を終えるのかと、人生をあきらめていました。ま、投資でその分を埋めるしかないとやっきにもなっていますが。ところが、自分がそこそこ恵まれているということを知ることができ、自分の周りにはいない平均的な人たちはどのような生活なのかと、最下層に近い生活をしていると思い込んでいたのに、実は恵まれている方の層にいることに、この年になって気づきました。

 まあ、今はサービス業の会社で仕事をしており、自分よりも収入が高い層をターゲットにサービスを展開しているので、毎日、上には上がいることを見せつけられてはいるのですが。

 それはさておき、本書では、1億総中流という社会はもともとからして幻想だった。高度経済成長期にも格差は存在していた。もともと存在していた格差が、バブル経済の崩壊を機に目に見える形で、出てきただけだということです。

 そして、イギリスに10年滞在した筆者の経験をもとに、イギリスの階級社会についての記述があり、さらに日本がイギリス型の階級社会に近づいていると警鐘を鳴らしています。格差社会と階級社会は、厳密には違っており、簡単に言えば競争社会で収入に大きな格差がある社会が格差社会で、この格差が世代間で固定化される社会が階級社会だと筆者は主張しています。

 イギリス型格差社会では、最下層の労働者は、親から義務教育終了と共に働くということを刷り込まれ、仕事にプライドを持てずに低賃金の仕事をし、さらには教育レベルが低いために自分よりも下の人間を排斥する人間になるようです。

 その例として、筆者がイギリスで事務所の机を発注した時の例が書かれていますが、イギリスに滞在経験のある私の友人も、水道工事を依頼した際に来たイギリス人の業者がひどく、部品がないからということで平気で修理を後回しにされたと言っていました。友人から聞いた当時は、その友人は本書の中の「ロンドン村」の上位に位置するエリートで、イギリス人を馬鹿にする話し方をしていたので、話半分で聞いていましたが、本書によって、イギリス人の労働者階級の仕事の仕方と妙に一致する部分がありました。

 また、教育においては、イギリスの上層の階級の子供は小学校から私立に行き、さらには大学入試でも優遇受けるということと、公立の学校のほうが低く見られているということには驚きました。これも、私の母親から、イギリスに住む友人が、子供を公立の学校に入れようとしたところ、そんなところに行かせたら友達付き合いを辞めると言われた友人の話と、符合しました。

 よく日本の政治家が、「努力すれば報われる社会」ということを言いますが、先ほども書いたように、日本でも東大入学者の家庭の平均年収が1000万を超えている状態になっています。

 本当の意味で、努力すれば報われる社会になってほしいものです。



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